評価:★★★★Amazon.co.jp商品の説明
愛娘を亡くした痛手を癒すべく島に移り住んだ女性を見舞った想像も絶する危機とは?平凡な女性の勇気と再生を圧倒的な緊迫感で描き出す「ジンジャーブレッド・ガール」、静かな鎮魂の祈りが胸を打つ「彼らが残したもの」など、切ない悲しみから不思議の物語まで、天才作家キングの多彩な手腕を大いに見せつける傑作短篇集。
2008年に原書でリリースされた短篇集を二分冊した一分冊目。
冒頭の短篇「ウィラ」は、キングにとって新しい短篇創作期を駆動した記念すべき一篇とのこと。アメリカ横断鉄道旅行中、ワイオミングの片田舎で、いつまで待っても来ない列車を待ち続けている一群の人々。オチ自体は決して新しいものではない(『シックスセンス』とか、おっとっと)が、優雅で古びていて、とてもアメリカンな、いいバーボンのシングルをストレートできゅっと行いったときの香りがする。なるほど、キングはこうしてなめらかに離陸していったのだ。
「ジンジャーブレッド・ガール」は、赤ん坊を突然死で失い、心の均衡を崩して離婚の危機に陥った女性が、ただ走ることに慰みを見つけ(・・・ここで終わらないのがキングらしい)、オフシーズンは無人に近くなる金持ちたちの別荘がずらりと並ぶ島で、サイコキラーにつかまって逃げ出す話。単純だけど、キングの超絶ストーリーテリングスキルが冴えわたる題材。
「エアロバイク」 は、妻を亡くした独り身のイラストレーターが、医者からダイエットをすすめられて、地下にエアロバイクを設置。医者がたとえで言った話が妄想と化し、強迫観念にムチうたれるままに自転車を漕ぎまくる彼を、「脂質」道路工事者たちが自分たちの仕事を奪われまいとトラックに乗って追っかけてくる話。笑えるのだが、こんな題材からも妄念サスペンスを生みだしちゃうあたり、誰にも真似できないキングの名人芸といえるだろう。
「彼らが残したもの」は、9・11、ツインビルに出社するのを、たまたまその日ずる休みをしていた元保険会社員の話。元同僚たちのオフィスにおいていた小物が彼の家にそろってひょっこり現れる。捨てても戻ってくる。幻覚かと思ったが、同じアパートの女性にひとつを渡したところ、彼女はノイローゼになりながら9・11その持ち主が見舞われた惨事の細部をことこまかに話しながら返しに来た。そこで彼は遺族にひとつずつ小物を返しに行く。それは遺された者どうし心を癒す行為となる。
スカートがめくれないよう抑えながら、百十階の窓から身を投げた若い女。墜落していく瞬間テレビにとらえられていたその顔には、どうにか助かるんじゃないかという表情が読み取れた・・・という箇所は、死というものとの距離感を失わせて、肌が粟立った。回想される夏の海辺でいっしょに遊んだ時の光景が胸を打つ。
この短篇集の前に当たる『第四解剖室
これは、村上春樹の『神の子どもたちはみな踊る